リフォーム・リノベーション・新築・不動産の教科書

リフォーム、リノベーション、新築、不動産など住宅業界ならではの「謎」を解説します。不動産兼建築のプロだからわかる「裏側」と「本音」を一般の方になるべく丁寧にわかりやすく説明することで、住宅取得に失敗する方を一人でも救いたいと思っています

「ホテル不足はウソ」中小ホテル・旅館業者が民泊新法に反対する理由とは?違法民泊の数は?

f:id:nazokaizin:20161101193756p:plain

今日本でおきている民泊ブーム。民泊を増やすために民泊新法ができますが、中小ホテル旅館業者は反対しています。民泊が増えることのデメリットも多くあるとしています。今回はなぜ民泊が増えるのか、違法民泊の実態などについて詳しく解説していきたいと思います。

 

スポンサーリンク
 

 

なぜ民泊ブーム?

 

民泊がブームになっている背景には二つの理油があります。一つは海外旅行観光客の急増です。外国人の旅行客の訪日によりホテルが不足。これで国が困ったわけです。どうすれば良いのか?そんな時に不動産業界から「日本には800万戸も空き家、空き室があるので、それをホテルとして使ったらどうか?」という要請があったわけです。

 

国も800万戸もある空き家を「有効活用できないかな?」と頭を悩ませていましたので、これは良いアイデアだと採用しました。それが民泊というわけです。

 

ただ元々賃貸や普通の部屋として使われていたものをホテルにすると、何かとトラブルもおきるわけです。

 

ホテル運営するなら旅館業法を守るべきだ

 

一般的にホテル経営をする際には、国の法律をもとにした客室を作り、届出を出さなければなりません。それが旅館業法というものです。ですから、空き部屋をホテルとして使うなら、旅館業法を守るべき、と主張する人たちが現れたのです。それが、ホテルとか旅館を経営している人たちです。既存のホテル業界の人たち、と考えればいいでしょう。

 

このホテル・旅館業界の人たちは、民泊を経営するなら旅館業をきちっととりましょうと、主張するわけは、商売に直結するからです。つまり、そこかしこに民泊が登場すれば、その方たちのホテルに泊まるお客さんが減るのでは?と危機感を募らせているわけです。ぶっちゃけ、民泊は増えて欲しくない、というのがホテル業界の人たちの意見なのです。

 

違法民泊の数はどれくらいあるのか?

 

f:id:nazokaizin:20161014080135p:plain

とはいうものの、ホテル業界と不動産業界(民泊推進派)が喧嘩していても、日夜海外観光客は増え、ホテル不足で困っているわけです。都市部のホテルは値上がりしているので、日本人でさえ困っているわけです。

 

そんな中で「空き家を民泊として貸し出せばお金がもらえる。ラッキー」という感じで、もはや旅館業法など関係なし位に、どんどん貸し出す人たちが現れたんですね。元々何にも収益も生まない部屋が、一泊5000円とか、1万円とかで貸し出すことで、お金が入ってくる。こんな嬉しいことはありません。

 

貸し出す先はAirbnb(エアービーアンドビー)というような、民泊選びができるサイトです。ここに自分の空き部屋を登録して、値段を決めて、あとは応募を待つ。その数は、現在4万6000カ所あるとされています。

 

旅館業法を緩和して特区民泊を作ったわけとは?

 

ただ国も、そのような民泊を野放しにするほど甘くありません。旅館業法をとって民泊を運営しなさい、というルールにしたいのですが、結構ハードルが高いんです。民泊を旅館業法に適法化させるのは。そこで、東京都大田区とか大阪市とか、一部旅館業法を緩和する地域を作りました。この地域にある空き部屋なら、緩和された旅館業法を守れば民泊を合法的に運営できます。これが特区民泊と呼ばれます。

 

先ほど民泊を正式に運営できると言いましたが、もし法に則らずに民泊を経営すると、無許可営業とされ、違法になります。懲役6ヶ月以下の罰則となります。先ほど、4万6000件ほど民泊があるとされていますが、実際そのほとんどが無許可営業なので現状違法になります。

 

では、合法的に運営されている物件はどれくらいあるの?という疑問が頭に浮かぶと思いますが、これはまだまだ数十件程度です。合法民泊だけを取り扱うようなサイトがあるのですが、そのようなウェブサイトを見ると、非常に少ないです。つまり旅館業法をクリアするのは結構大変なんです。

 

民泊新法がスタートする

 

このままだと民泊は増えていかない、と思いますよね。国もそう思ったわけです。そこで今作ろうとしているのが「民泊新法」というものです。

 

これはどういうものかというと、4万6000件あるとされる違法民泊を、民泊運営者が国土交通省に登録し、自治体に届けを出すことで合法とみなす、というものです。

 

そして、民泊を仲介するサイトは観光庁に登録する必要があります。

 

民泊を運営しますよと国と自治体に報告、登録を受け、民泊を貸し出すサイトも国の登録を受ける、そんな感じで国の目が届くようになれば、旅館業法がなくても大丈夫です、というのが民泊新法になるわけです。

 

トラブルが急増するのか?

 

f:id:nazokaizin:20160919133826p:plain

なんだ民泊新法いいじゃないか、と思う方もいるかと思います。しかし反対するものもいます。それが再び登場する、ホテル・旅館経営者たちです。合法な民泊が増えれば、さらに一層お客さんを奪われるのではないかといことです。

 

先日の読売新聞に日本中小ホテル旅館共同組合の意見広告というものが載っていました。

 

どんな意見かというと、都市部の民泊が増えれば、地方に行くことが少なくなる。そのため国が進めている地方創生(地方の活性化)とは真逆の取り組みという指摘です。

 

耐震性、火災時の緊急避難、管理者が問題だ

 

それと、ホテル旅館業者は、国や行政から厳しい指導を受けてきたと主張します。例えば、以下のようなことをきちんと取り揃えているということです。

 

耐震性が十分にあるかどうかという建築確認検査済証、火災時の避難確保である消防法令適合通知書、管理者の365日24時間常住「非常時の誘導、警察、消防所、病院への緊急連絡」。

 

 

これら3つのことは今回の民泊新法では除外されているそうです。それだと泊まった方の安全性については不安が残りますね。

 

スポンサーリンク
 

そもそもホテル不足ではない?

 

さらに、組合が主張するのは、客室数には余裕があるよということです。ホテル不足ではありません。中小のホテル、旅館だと、平均稼働率は平日で約50%、土日祝日前日で約80%。郊外ではそれより10%低いとのことです。

 

2020年に4000万人の外国人旅行客の誘致を考えたとしても、今作っている新築のホテルで十分に対応できると指摘しています。

 

民泊では事件・事故が起こりやすい?

 

事件・事故が起こってからでは遅いですよね。新しくできる民泊の中にはそういうリスクを孕む物件がないとは言い切れません。さらにそのようなトラブルばかり起きてしまうと、日本の民泊はいいかげん、という印象を世界に与えかねないので、安全性はきっちり確保して欲しいというのは私も思うところです。

 

管理者がいないので、近隣トラブルが増える

 

そしてもう一つは民泊に張り付いて管理する人がいないので、ある意味では旅行客を野放しにしてしまうリスクがあります。最も多く考えられるのが、騒音です。民泊は普通の家、マンションがホテルになるので、近隣には一般の生活者がいます。旅行客のテンションでわーと騒がれる方もいます。またゴミをそこらに撒き散らしてしまうような、マナー問題もよくクローズアップされるところです。

 

民泊は一気に増える、トラブルも一気に増える?

 

もしあなたの家の隣が空き家でそこが民泊として運営し始められたら、どう感じますか?新法がスタートすれば一気に何万、何十万という民泊が世の中に溢れ、そこかしこに外国人旅行客が宿泊する国になります。

スポンサーリンク